「ごめんね、急に手掴んじゃって…」

「い、いえ…」


いつものように猫を被った俺は彼女に優しく声をかける。

女の子はまだ怖いのか、体が震えている。

だが、怯えているくせに突然現在地から東京タワーまで大声が出せるとか可笑しなことを言い出し、思わず笑ってしまった。


この時、俺は少し彼女に興味が湧いた。

今までは他人に無関心だった俺が初めてもっと知りたいと思ったのだ。

彼女が電車に乗り込んで行ったことにハッとする。


名前くらい聞いておけばよかった……



しかし、ある日のこと。

俺は彼女と衝撃的な再会を果たす。


「とわぴ!!!」


現在。

高校2年生になった俺はHRが終わり、友人の深森と帰りに寄り道しよう、と話していた時だ。

後ろの方から妙な名前で呼び止められる。

振り返ると1年前に電車でセクハラに遭っていた女の子。

それを俺が助けた。

そして彼女が目の前に現れた。


同じ学校だったのか…と思いながら彼女の言葉を待っていると、

「好きです!!付き合ってください!!!」

急に跪き、3本の赤いバラの花束と手紙を寄越してきた。


一瞬、人違いかと思った。

俺は記憶力が良いので人の顔はすぐに覚える方だ。