月日は流れ、高校生になった。
親戚が営む喫茶店でバイトをしていた頃。
この日は休日だっため、とても忙しく、絶え間ない客の対応をし、あまりの疲労に苛ついていた。
疲労と鬱陶しい客にストレスが溜まり、イライラが頂点に達しそうになるのを堪えて帰りの電車に乗り込む。
しばらく電車に揺られながらぼんやりと遠くの方を眺めていた時、
ふとドア付近に立っている女の子に目がいった。
その子は鞄を抱き抱え、身を縮こませている。
しかも顔が真っ青。
よく見ると女の子の真後ろには30代半ばくらいの男性が彼女の髪に自分の顔を擦り寄せているような行為。
うわ、おっさんが俺と同い年くらいの女子にセクハラしてる……
満員電車なため、周りにいる人たちは彼女がセクハラに遭っていることに気づいていない。
気づいているのは俺だけか…
仕方なく、心の中でため息をついた俺は人混みをかき分け、女の子と男性の間に割り込んだ。
「──すみません、前失礼します」
泣きそうになるのを堪えていた女の子は少し驚いたのか、じっとこちらを見てきた。
そしてアナウンスが流れ、電車が停まった。
俺はドアが開かれたと同時にその子の手を取って電車を降りた。