私の答えに彼はブハッと吹き出した。
「あははっ!現在地から東京タワーまで出せるとかっ……喉潰れるでしょ!」
どうやら彼はツボに入ってしまったらしい。
何が面白いのか分からないが、腹を抱えて笑っている。
ムッとしながら彼を見ていると次に乗る電車がやって来た。
「…電車来たから乗るね」
「あ、うん。気をつけてね」
「…そうだ!お礼言い忘れてた!!」
痴漢から助けてもらったというのにお礼をせず帰ろうとするなんて常識がなさすぎる。
「さっきはどうもありがとう。
あなたのおかげで助かりました」
そう一言お礼を言って電車に乗り込む。
「──どういたしまして」
振り返ると彼は目を細めて優しげな表情でこちらを見ていた。
その時だった──
彼の笑顔を見てスコ───ンと何かが落ちる音がした。
顔が火照り、心臓がバクバクと動き出す。
私はこの日、この瞬間、
彼、日山 永遠に恋をしたのだ。
そしてしっかりと彼の顔を見たけど、間違いない。
彼は私の大好きな"推し"にそっくりだった───