だめだめ。
私は彼を遠くから見つめるだけの恋に戻るって決めたんだから。
推しのグッズを買いたいけど金欠で購入できないのを我慢するのと同じだ……
「ごめんね、悠くん。私今日早く帰らないと──…」
「やだっ!!」
悠くんが涙目で頬を膨らましながら見上げてくる。
「ゆ、悠くんスカート引っ張られるとちょっと恥ずかしいなぁ…なんて…」
「みおちゃんがいっしょにかえってくれないならぼくかえらない!ここからいっぽもうごかない!!」
珍しくわがままな悠くんに少し困った。
「ゆ、悠く──…」
「いいよ、花崎さん。一緒に帰ろう」
呆れたため息をついた日山くんがそう言って悠くんの手を取る。
「ほら、悠。花崎さん一緒に帰ってくれるって」
「…ほんと?」
「うん」
日山くんの返事に悠くんは花が咲いたように顔を綻ばせて「やった!」と大喜びする。
「みおちゃん!かえろ!」
「…え、う、うん。日山くん、いいの?」
「…別に。悠が駄々こねるなんて滅多にないし。お前、相当悠に好かれてるんだな」
…確かに悠くん、私には凄い懐いてくれるけど。
でも私と一緒に帰りたいだなんて悠くんってば、可愛い奴め。


