「みおちゃんもいっしょにかえろ」
「私はもう少しギターの練習して帰るから大丈夫だよ。ありがと」
「やだ、みおちゃんといっしょにかえりたい」
「うひゃ〜……」
つぶらな瞳でお願いされ、断ることが出来なかった私は「…わかりました」と頷いた。
「ってゆーか悠くんのお家の人と私も一緒に帰っていいの?」
「うん、きょうおにいちゃんがきてくれるから。あとぼくのおにいちゃんとってもやさしいからしんぱいしなくてもだいじょうぶだよ」
「…お兄ちゃん?」
悠くんにお兄ちゃんいたっけ?
一人っ子じゃなかった?
不思議に思いながら時刻を確認すると活動時間はとっくに過ぎている。
そろそろ私も帰らなければならない。
私には家に帰って推しを愛でるという使命があるのだから──。
「みほちゃーん、私帰るねー」
叔母のみほちゃんに一言声をかけると職員室の奥の方から「は〜い、お疲れ様〜」と返事が返ってきた。
ギターをケースに仕舞い、リュックのように背負う。
「玄関まで一緒に行こっか」
「うん!」
悠くんと手を繋いで玄関へと向かう。
到着すると見覚えのある人物がスマホをいじって扉の前に立っていた。
「おにいちゃーん!」
悠くんが嬉しそうに扉にもたれかかっている人の所へ駆け寄る。
「悠──…と、花崎さん?」