「今回の相手が俺だったからよかったものの、もしそうじゃない奴ならお前、とんでもないくらい最低な人間だぞ」


彼の言葉に何も言い返せない。


「じゃあな、二度と俺の前に現れるんじゃねえぞ」


日山くんはそう吐き捨て、教室を出ようとする。


「──待って!!!」


呼び止めたと同時に日山くんは怪訝そうな表情で振り返る。


「もう、日山くんには近づかない。だから──…」


私はスカートのポケットからジッパー付き袋を取り出す。


「──最後に日山くんが取り入れた酸素と吐き出した二酸化炭素をこの袋に収めさせてほしい……」

「うわぁ……」


完全にドン引きされたが、私は気にせず「おりゃあっ!!」と袋を上下に振り、空気を捕まえる。

そしてぎっちりつまった空気の袋をうっとりと眺めた。


うへへへ…
日山くんと共に過ごした空気ゲットじゃ〜〜!!!


「没収っ!!!」

「わーわー!!?やめて!返してー!!」


空気が入ったジッパー付き袋を日山くんに取り上げられ、

パンッ!!と破裂音が教室内に響いた。


「ぎゃあー!?日山くんの二酸化炭素がぁー!!」

「やめろ気持ち悪い…」


私はがくりと膝から崩れ落ち、

ちーんと全身真っ白になるくらい燃え尽きたのだった───