「…美緒」
「な、なんっ、なんですか…」
「キスしていい?」
「えっ、あっ…そんっ…い、いいですよ」
許可を得た俺は一歩距離を詰め、彼女の頬に片手を添える。
恥ずかしそうに目を閉じた美緒にフッと笑みをこぼし、そのまま唇を重ねた。
そしてそっと唇離すと美緒は驚いた様子で「えっ!?」と声を上げる。
「え、あの…口ではなく、ほっぺにキスされるのだとばかり思ってたのですが……」
「んー、まあ、俺ら口ではしたことなかったじゃん」
「そう…なんですけれども……」
「……ゔぅぅぅぇあ〜〜〜〜っ!!!!」
猛獣のように唸り声を出し、顔を両手で覆い隠す。
「も、もうっ!!その子どもみたいな…いたずらっ子のようなニヤニヤした顔やめていただけますかねえ!?」
「俺、子どもだしわがままだし、美緒が思ってる以上に面倒臭い男だけど…お前、そんな俺を愛せる自信ある?」
「……私は日山くんの全部が好きだから愛せる自信はあるよ!!」
「そっか」
今、思い返せば、彼女は俺の本性を見ても冷めることなくずっと好きでいてくれた。
あの時からもう、美緒は俺自身を受け入れてくれていたのかもしれない。


