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それは、高校に入学して1週間程のこと。
放課後、
日直だった俺は日誌を担任がいる職員室まで提出しようと教室を出た時、どこかから楽器の音色が聞こえてきた。
最初は吹奏楽部か軽音楽部が練習していたのかと思った。
だけど、吹奏楽部が1年生の教室で練習場所に使うはずもないし……
弦楽器を奏でる音をたよりに足を運んでいく。
たどり着いたのは2クラス先の教室。
「1ーD」とルームプレートが下げられている。
一体誰が弾いているのだろう。
中にいる人にバレないように少しだけ顔を覗かせる。
視線の先にはギターを弾きながら楽しそうに歌っている女子生徒。
その人物が現在付き合っている美緒だと知るはずもなく、彼女の歌声とギターの音に心が奪われた──
あの時、俺は一目惚れならぬ一聞き惚れというものをしたのだと思う。


