上の方から不機嫌な声が降ってくる。
「あら、わーちゃんすごい顔」
「…悠の嫁とか好き勝手言ってんじゃねえよ」
「わーちゃんったら、幼児相手に何ムキになってんの?」
「うるせえ、美緒は俺の彼女だから誰にも渡さねえよ」
「はいはい。リビングでケーキの準備してるから早く下りてきてね」
涼香さんは「悠、行くよ」と悠くんの手を取って階段を下りていく。
「みおちゃんとまだしゃべってないのに…」
「後でいっぱい喋れるから大丈夫だよ〜」
涼香さんと悠くんがその場を後にして、私たちの間には気まずい空気が流れる。
しばらくして、はあーっと盛大なため息をつく日山くん。
「……下、行くか」
げっそりとした表情をする彼に「そうだね…」と裏返った声で返事をする。
『美緒は俺の彼女だから誰にも渡さねえよ』
先程の日山くんの言葉が頭に何度もよぎり、舞い上がりそうな気持ちを必死に抑えた。
「日山くん!」
大好きな人の名前を呼ぶと「何?」と言って振り返る。
「私、日山くんを愛してもいいんだよね?」
そう聞くと日山くんはきょとんとする。


