「…もし、目を開けたらどうなりますか?」
「鼻から麦茶を飲んでもらいます」
「Wow……」
日山くんが立ち上がり、再度部屋を出て行く。
数秒後に戻ってきて私の前にしゃがみ込み、ふわりと柔軟剤の香りが鼻を掠めた。
「もう開けていいよ」
そう言われ、覆っていた両手を下ろし、ゆっくりと目を開ける。
そしてすぐさま視界に入った"物"に私は「えっ…」と声を漏らす。
これって──…
「バラの花束…?」
日山くんが手に持っているのは赤いバラが幾本か束ねられている花束。
「───そ、美緒が俺に告白してくれた時もバラの花束くれたから俺も返事として渡したいなって思って」
「日山くんあの時貰ってくれなかったじゃん」
「……それはごめん」
「いや、別にいいんだけど…」
バラの花束に視線を移し、本数を数える。
バラの本数は12本。
私が彼に贈ったのは3本だ。
…まあ、貰ってくれなかったんだけども。
「美緒はあの時何で3本にしたのかって理由ある?」
「え、それは花言葉が『愛しています』だからその意味も込めて3本にしたんだけど…」
「じゃあ、12本の花言葉の意味知ってる?」
「…知らない」


