「ひやまぐん!!待っでよ〜〜〜っ!!!」
ピタッと無意識に足を止め、振り返る。
すると美緒は大粒の涙を流していて、サーッと血の気が引いた。
…どうしよう、泣かせてしまった。
美緒が泣いている所なんて初めて見た。
転んだのか、膝から血が出ている。
先程まで恥ずかしかった自分がどうでもよくなった俺は彼女の元へゆっくりと歩いていく。
目の前まで来て顔を覗き込むようにしゃがむと美緒は泣きながら
「ひ、ひやまぐ……もどっでぎでぐれだぁぁ……」
そう言ってふにゃっと笑った。
泣きながら笑ってる……ほんと変な奴。
その後、俺は美緒をおんぶして近くの公園のベンチに座り、2人揃ってぼんやりと空を眺めた。
美緒は速水との関係を話してくれた。
どうやら速水の告白を断ったらしい。
2人が両想いだと勘違いした俺はただただ色々と恥ずかしい発言をしてしまったのだ。
穴があったら入りたい。
あの時は動揺して頭がこんがらがっていたけど、思い返してみれば速水は俺の方を見て、
『オレ、美緒ちゃんが好きだよ』
と言っていた。
目も思いきり合っていた。
あれは彼なりの、俺に向けての挑発だったのだろうか…