美緒に会ってなんて言おうか考えていたことも全て忘れて、


「───…へー、両想いじゃん」


最悪だ。

初恋(・・)がこんなに呆気なく終わるとは…


「自分でチカくん勧めといてあれだけど、お前は俺が好きなんじゃねえのかよ」


恥ずかしくて、消えてしまいたい。


「もうチカくんに乗り換えんの?」


情けない。


「俺のこと諦めんの?」


かっこ悪い。


「美緒は…俺だけ見てればいいだろ」


今すぐ過去に戻ってこの気持ちをなかったことにしたい。


「お前は!速水(あいつ)のことじゃなくて!俺のことだけ見とけばいいんだよ!!」


この場に居づらくなった俺は全力で逃げた。

それはもうとんでもないくらい逃げた。

だけど、美緒は必死に追いかけてきて、


「ひゃーまくん!!待ってよぉぉぉ!!!」


大きな声で呼び止められる。


──こんなださい自分を見られたくない。


──みっともない姿を見られたくない。


彼女の呼びかけに従うことなく走っていると「うぎゃっ…!!」と後ろから小さい悲鳴が聞こえた。