「これどこに持っていくの?」
「あー……教室……」
「隣のクラスか。半分持つよ」
半分以上のノートを持ってくれた日山くんは教室へさっさと入っていく。
そして私も彼の後について行き、教卓の上にノートを置いた。
「ありがとう、とわぴ!それではさようなら!」
気まずい空気に耐えられず、お礼を言った私は扉の方へ歩き出す。
「花崎さん」
足を一歩手前に出した時、後ろから日山くんに呼び止められた。
振り返ると笑顔ではあるが、明らかに目が笑っていない。
「さっき俺が言ってたこと、聞いてた?」
「な、なんのことやら……」
「ってゆーかいつから聞いてた?」
じりじりと距離を詰めながら質問をしてくる彼。
私は距離を空けるようにして一歩ずつ下がっていく。
しかし後もう少し右に寄っていれば教室から逃げ出すことに成功したのだが、
運悪く、トン…と背中に壁が当たってしまった。
そして顔の横に日山くんの手が壁に添えられる。
す、凄い…これが壁ドン…!!
1年前、勇気が出なくて声をかけることさえも出来くて、
ただ見ているだけの存在だった彼が今、私に話しかけ、壁ドンをしている。