フラグとは、「伏線」や「予測」という意味がある。
『お前みたいな女絶対好きになんかなんねーし。そもそもタイプじゃない』
美緒と関わり始めた頃、俺は彼女に断言のような、または宣言のようなことを発していた。
勿論、タイプではなかった。
身長は160センチ以上あってほしいし、容姿は大人びていた方がいい。
それなのに───…
どうやら俺はフラグを回収してしまったようなのだ。
…こんなはずじゃなかった。
彼女を好きになるなんて思わなかった───
「日山くん」
朝、教室に着き、鞄から教科書類を取り出していた途中、速水 千花が目の前に現れた。
「チカくん、おはよう」
作り笑いで挨拶すると、速水は一切表情を変えず、
「放課後、美緒ちゃんと話すんだけどさ…」
彼の瞳は揺れることなく真っ直ぐに俺の姿を捉える。
「オレ、本気で美緒ちゃん奪いに行く。だから今日、美緒ちゃんをオレの彼女にするから!!」
「……勝手にすれば」
「は、はあっ!?なんでそうなんの!?
日山くんだって美緒ちゃんのこと好きなんでしょ!?」
「チカくんには関係ねえだろ」
「2人両想いじゃん!!」
「んなわけねえだろ」