「ま、待って!日山くん!!」
急いでローファーに履き替え、正門を通り抜ける日山くんの背中を必死に追いかける。
「ひゃーまくん!!待ってよぉぉぉ!!!」
「っ…!?来んな!チビ!!」
「チビじゃないよ!!私 152センチだもん!!」
「チビじゃねえか!!」
「全人類の152センチの女子に謝って!!」
走るのが速くて追いつく気配がない。
寧ろ差が開く一方である。
体格の違いをこのタイミングで思い知らされるとは……
走っていた最中、足がもつれ、ぐらりと視界が揺れる。
「うぎゃっ…!!」
すて───ん!!!
綺麗に転び、膝を擦りむいてしまう。
この歳になって転倒すると衝撃のあまり、体全身がずっしりと重く感じる。
じわりと膝小僧から赤い液体が滲み出てくると同時に目頭が熱くなる。
──待って、お願い。行かないで…
どんどん小さくなっていく日山くんの背中にぽろぽろと涙が流れ落ちる。
「ひやまぐん!!待っでよ〜〜〜っ!!!」
昨日スーパーで一緒に買い物していた女の人のことまだ聞けていないし、
日山くんにでべそって言ったのも謝ってない。


