「…重い」


職員室からクラス分のノートを取りに行き、現在私は教室へと運んでいる最中だった。


日向くんの缶バッジはゲットできたけど、やっぱ引き受けるんじゃなかった…
重すぎる。

ずっしり積み重なっているノートを持ち、ノロノロと廊下を歩く。


そんな時、教室から勢いよく女子生徒が飛び出し、こちらに向かって走ってくる。

そしてすれ違いざまに女の子は涙を流していた。

どんどん小さくなっていく背中を見つめ、どうしたのだろう、と首を傾げる。


さっきの女の子が出てきた教室、隣のクラスだったな。

更には大好きな日山くんがいるクラスだ。

少し開いている扉の隙間から中が見える。

目を細めて覗いてみると話し声が聞こえた。


「…おい、お前何先に帰ってんだよ」


いかにも不機嫌です!とでも言ったような重低音ボイスが耳に入った。

後ろ姿で顔は見えないが、どうやら誰かと電話をしているようだ。


だが、私はあの後ろ姿に見覚えがある。


「さっき名前知らない奴に告られたんだけど、断ったら泣きながら抱きついてきたんだよ。
しかもそいつのリップが付いて制服汚れたし…
あのクソ女マジで許さねぇ」