「…今度は何」

「ふふっ…日山くんと同じ目線だ〜!って思って!」

「目線?」

「うん!ほら、階段!」


自分の足元と彼女の足元に視線を移す。

俺は後一段下りると踊り場に到着する所に立っていて、花崎さんは俺より二段上の位置にいる。

そして丁度段差で身長と目線が同じになっていることに気づく。



「いつもより日山くんの顔がよく見える!」



ふにゃっと口を広げ、子どもっぽく笑う。


彼女の笑顔に釘付けになった時、

スト────ンと何かが落ちる音がした。


しだいに身体全身が火照りだし、心臓がとんでもない速さでドクドクと鳴り響く。

「じゃあ、私補習行ってくるね!ばいばい日山くん!愛してる〜〜!!!」

返す間もなく去っていく彼女に深森は「花崎ちゃんうるさいな〜」と微笑ましそうに呟やいた。


「んじゃ、おれたちも帰──…えっ!?永遠どうした!?お前、顔真っ赤じゃん!!」


深森が俺の顔を見てギョッとする。

「おーい!永遠〜!」

俺の顔の前でひらひらと手を振るが、全く動かない様子に「……マジで?」と消え入るような声を出す。


「おい、永遠!息しろ!逝くな!永遠ぁぁぁっ!!!」


うるせえ、息しとるわ。

そう言い返したい気持ちで山々だったが、自分の気持ちに気づいてしまい、頭の中が混乱状態に陥った。