花崎さんに背を向け、一歩足を踏み出そうとした時、
「待って日山くん!」
両手で腕を掴まれ、びくっと肩が飛び跳ねる。
「な、なんっ、なんっ…なんだよ……」
動揺のあまり口が回らず、声も裏返りかけた。
「あの…さ……」
小さい手できゅっと袖を握られる。
控えめな表情で見上げる仕草にドクンッと心臓が大きく音を立てる。
彼女の瞳に逸らすことができず、言葉を待っていると──
「連絡先、交換してほしい」
「……は」
拍子抜けしたと同時に強張っていた体が一気に和らいだ。
「日山くんの連絡先知らないな〜と思いまして……交換させて頂いてよろしいでしょうか!!」
花崎さんはスマホを差し出し、頭を下げた。
「…まあ、別にいいけど……」
「花崎ちゃん!おれとも交換しようよ〜!」
「うん!日山くんに連絡先送ってもらうね!」
「えっ、今交換してくんないの?」
「冗談だよ〜!」
「もう〜!花崎ちゃん意地悪〜!」
その後、花崎さんは俺たちのQRコードを読み取り、メッセージを送信する。
その後、スマホを上に掲げ、大声を上げる。
「日山くんの連絡先ゲットじゃぁぁぁぁ!!!」
「うわ、うるさ」
「花崎ちゃん、プラス深森ね」
「日山くん!毎日連絡していい!?」
「え、無視?」
嬉しそうな笑顔を浮かべる花崎さんと目が合い、「あっ!」と声を出す。


