「ひーやーまーくーん!!!」


ぐるぐるとそんなことを考えていると花崎さんが教室の扉からひょっこりと顔を出した。


「お、噂をすれば花崎ちゃんじゃ〜ん」


口角を更に上げてニヤニヤする深森を睨みつける。


「日山くん!おそようございます!!」


花崎さんは俺の席の前までやって来て、ピシッと気をつけをし、元気よく挨拶する。

「ほんとは今日の朝に声かけたかったんだけど、日山くん急いでたみたいだったから我慢したんだ〜!後、お昼ご飯も一緒に食べられなくて寂しかったけど、今こうして話せたしもうなんでもいいや〜!!」

無邪気な笑顔を向けられ、あまりの眩しさに目を細める。

「…花崎さん、俺に何か用?」

謎に速く動く心臓を抑え、平常心を保ちつつ、にこりと微笑む。

すると花崎さんは眉をハの字に下げ、悲しそうな表情を浮かべた。

「…日山くん、私のこと『美緒』って呼んでくれるんじゃなかったの?」

「ゔっ…!!」

しょんぼりする彼女に心臓をぎゅっと締め付けられる。

「ブッハ!!え、何!?永遠、花崎ちゃんのこと下の名前で呼ぶことにしたの!?2人いつの間に進展してたの!?」

笑いを堪えられず、吹き出した深森がうりゃうりゃと肘でつついてくる。


「うるせえ、目潰すぞ」

「…え、ごめん……」


下から睨みつけるようにそう言うと深森は口を閉ざした。