恐る恐る振り返ると穂波さんと花崎さんが話しながら歩いている。
『好きだよ、日山くんが大好き。
優しい所も口が悪い所も笑うと子どもみたいな所も……全部好き!』
あの時から彼女の言葉と笑顔が頭から離れない。
花崎 美緒と関わるようになってから俺はどうもおかしい。
昨日なんか速水 千花って奴と楽しそうに話していただけで腹が立ったし、
『花崎さんの好きな人は俺だから』
とか、
『…今日、一緒に帰る?』
とかとか、
『…俺も美緒って呼ぶ』
とかとかとか…!!
何故あんな発言をしてしまったのか、自分でも分からない。
今思い出しただけでゾクっと鳥肌が立つ。
後、視力が悪くなったのか、花崎さんがやたら美化されている気がして……
言葉で表すことができないが、なんだか眩しいような──…
無意識に彼女を目で追っているとぱちっと視線が絡む。
「っ…!?あっ…俺、先…行くねっ……」
すぐさま目を逸らし、俺を囲んでいた女子たちにそう言って慌てて昇降口へ向かう。
女子生徒たちは早足で立ち去る俺の後ろ姿を見ながら
「日山くん、凄い焦ってたね」
「どうしたんだろうね?」
と不思議そうにしていた。