「ミキ」

手をついて耳許に囁く。スプリングが鈍く軋んだ。

君は小動物みたいに一瞬おののき、体を竦ませてから「・・・レン?」と声を震わせる。

「うん。僕はここ」

「ど、・・・なってんの?なんで、なんなの、なんであたし・・・っっ」

「落ち着いて大丈夫。誘拐でも拉致されたわけでもないから」

見下ろして、パニックを起こしかけのミキを宥めながら優しく前髪を梳く。ダークブラウンにカラーリングしたショートボブの艶髪は手触りがよくて、大好きなんだ。

誘拐の一言に息を呑んだ気配。君はきゅっと唇を引き結んでから胸で深く息を吸った。

「・・・・・・レンは平気?縛られてないの?」

まるでお祈りするみたいな姿勢で横たわったまま気弱な声が漏れる。

「ねぇ逃げらんないの・・・?どこに連れてこられたの、あたし達・・・!」