「美樹が浚われちゃいました」

『ミキ?・・・ああ、お前が惚れてる小暮の娘か。一人で片が付けられないなら手を出すな。社長命令だ』

(サイ)は投げたので回収しに行きますよ、いずれ」

『・・・廉』

征一郎さんの声がワントーン下がる。だけど退かない。退けない。

由弦(ゆづる)さんの弔い合戦をする気はないので心配は無用です」

『当然だ。・・・俺を失望させるなよ廉』

肯定で返して通話を切った。

櫻秀会のフロント企業でもあるグランド・グローバルの真下(ましも)征一郎(せいいちろう)が、六道会と事を構えるつもりがないのは良く分かってる。この世界はいつだって危ういバランスを保って成り立ってるんだ。

どこまで因果なんだろうね。僕が君と出会ったこと。・・・ちはるに会えずに死んだ由弦さんは征一郎さんの実の弟なんだよ。