婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 好きな人には婚約者がいたのに、略奪して結婚。だけど周りから認められないことを苦に結局幸せになれなかった話。
 好きな人に振り向いてほしくて、その人が好意を寄せている人間を排除。それを断罪されて死刑になった話。
 好きな人を嵌める形で結婚。しかし愛されないままの生活に耐えられなくて自殺。
 また、すごいラインナップの本を持ってきたなぁ。
「政略結婚は、貴族に生まれたからにはそれなりに覚悟はしていますが……。好きな人がいる男性を好きになって辛い思いはしたくないです」
 そうか。恋は素敵なことばかりじゃないよね、きっと。そう考えると、人を好きになるのもちょっと怖いかも。
「そうそう、トーマスさんが店番をしている時に、さっそくラブレターの代読のお客さんが2人来たそうです!ラブレターの代筆も順調ってことだよね?」
 え?
「えーっと、2回じゃなくて、2人?」
「ええ」
「なんで?それっておかしいよね?ラブレターの代筆のお客さんって、大量注文した一人だけだよ?」
 メイシーと顔を見合わせる。
 答えなんて一つだ。
 一人の人にラブレターを順に渡したんじゃなくて、別々の女性に渡したってことだ。
「「女の敵!」」
 今度代筆屋に来たら、説教してやるんだからっ!
「そうそう、文字を覚えるいい方法ってないかな?」
「教会で名前を書いてもらうのと、看板に文字を書く以外でですよね」
 メイシーがうーんと最後のクッキーを口に入れた。
「うん。できれば、大人が働きながら、ちょっとした空き時間を利用して覚えられるような方法があればって思うんだけど」
 空の皿をワゴンに乗せ、ティーポットを手にカップにお茶のお代わりを注ぐ。
「ほら、例えばお茶の葉にお湯を注いで、お茶が出るのを待つわずかな間とか……1文字ずつ覚えられるんじゃなかなって。今日ね、ライカさんに二文字だけ教えたんだけど、すぐに覚えたんだよ。すごくうれしそうだった」
「小さいころ、文字を覚えるのに、文字一覧表を使いましたよね?紙1枚に収まるから、仕事中でも持ち歩けるし、ちょっとした時間に出して覚えられるんじゃないですか?」
 あー、うん。まずはそう考えるよね。
「でもさ、文字一覧表の並び順をその前に覚えたよね?「あいうえお」「かきくけこ」っていうふうに。それを覚えないと、文字一覧表を見ても、どの字が何を現してるか分からないよね?」