婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 数字は何だろう?時間?にしては桁がちょっと違う。13、16、17。
 手紙の完成を確認して、封筒に入れる。封筒には今日の日付と、1週間後の保管期限を記入。
「お名前は?」
「ああ、カールで頼む。受け取りに来るのはサシャスという者だ。代理の者かもしれない」
 封筒に、カールとサシャスの名も記入する。それが終わると、カールと名乗った男の人は財布から金貨を1枚出してカウンターに置いた。
 金貨?お釣りはロゼッタマノワールまで取りに行かないと……。
「ああ、失礼。金貨ではお釣りの用意ができないのでしたね。いつもの癖でつい……」
 いつもの癖?ううう、そういえば、私とアルも貨幣価値がわからなくてライカさんのお店に行ったときに二人で金貨出して驚かれたっけ。
 っていうか、それ以降は金貨なんて持ち歩かないようにしてるんだけど。カールさんはいつも金貨持ち歩いて、いつもうっかり出しちゃうの?ずいぶん学習能力がないよね。
「細かいお金あったかな」
 と、カールさんポケットの中をががさがさしはじめたので
「お釣りありますよ、少し待ってていただければご用意いたします」
 と親切に教えてあげたらカールさんが驚いた顔をして、慌てて金貨を懐にしまって、変わりに銀貨を取り出した。
「あった、これで頼む」
 なんだ、すぐにポケットから出てきたけど、さっき探してたのは何だったの?銅貨を探してたのかな?変なの。

■30

「アル、代筆屋で新しい仕事を受けることにしたの。書いた手紙を預かって、取りに来た人に代読して渡すの」
 看板に文字書き作業をしているアルに、経緯を説明して保管場所を相談する。
「そうか、紙とペンも普通の家庭ではないから、読んでもらってすぐに返事を書けるというのはいいかもしれませんね。離れた場所にいる人に手紙を届ける事業というのも、代筆屋を拠点にして行えるようになるかもしれませんね。今は貴族間が使者を立てて書簡のやり取りをしているだけだけれど……。代筆屋が商売としてなりたち、国中に広がれば、識字率向上だけでなく、情報の行き来や、離れた場所との交流などいろいろと変化をもたらすかもしれませんね」
 アルはすごいこと考えるな。代筆屋を郵(文書などを取りつぐ宿駅)にしようというのか。

 夕食を終え、メイシーと二人でのんびりお茶タイム。今日はレッスンはない。