婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 そうか、期限を区切るということも大切なんだ。そうだよね、いつまでも預かっていられない。店もいつまでも続くかわかんないんだし。預かる期間が伸びれば伸びるほどお金が入ってくるって仕組みにすればいいのか。なるほど。
「代読料金が1セイン」
 エディは机の引き出しから1枚封筒を取り出した。
「依頼主と受け取り人の名前や預かり期間などのメモして管理する必要があるため、封筒に入れさせていただきます。その封筒代金が3セイン。手紙1枚8セインですから、合計で13セインになります」
 封筒代。そっか。手紙にいついつからいついつまで預かって取りに来なきゃ破棄みたいなメモなんてできないもんね。今はこのお客さんだけだけど、もしこの先ラブレター産業が大流行して代筆屋に手紙を預ける人が爆発的に増えても管理できるようにしないといけないんだ。
 すごいなぁ、エディ。
 感心して、エディの横顔を見る。
「問題ない。早速だが、ペンと紙を貸してくれないか。自分で書きたいものがある」
 あら、やっぱり自分で文字書けるんだ。代筆屋を使う目的は、誰かに渡して代読してもらうこと?
 紙とペンを渡すと、カウンターで何か線を書きはじめた。
 ドアに向かうエディの横に着いていく。
「あれでよかったか?」
「ええ、ありがとう。本当に助かったわ!」
 にこっと笑うと、エディも笑った。
「なるべく早く帰る。行ってくるよ」
「いってらっしゃい、気をつけて」
 エディの手が伸びて、私の頬を撫でた。伸ばされた手はすぐに離れ、ドアの外へと消えて行った。
 何気ない仕種なんだけど、エディが私ことを好きだっていうことは、えっと、小説とかだと「私に触れたい」とかそういう感じなのかな……。ええ、ああ、ううう。
 ち、違うよね?私が意識しすぎなんだ。
 ぶんぶんとシ邪念を払うように首を降ってカウンターの内側に戻る。
「じゃぁ、代筆頼んでいいかな?」
 え?自分で書いたんじゃないの?
 男の人の手元の紙に視線を落とすと、いくつかの線と丸印が一つ描かれていた。
 何これ?
「ここに、すすき野原と書いてもらえるか?」
 男の人が指を置いた場所に「すすき野原」と書き込む。
「この位置に大鷲岩、ここが杉三本」
 大鷲岩、杉三本。あ、もしかして地図?
 地図らしきものの下に、日付といくつかの数字を記入して完成。