婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 貴族社会って不思議なんだよねぇ。結婚前は異性関係がきれいじゃないとダメってところが徹底してるんだった。
 お手付き令嬢は、もはや嫁の貰い手無し!いや、運が良ければどこぞの後妻には収まるかもしれないが……。むしろ独身でいた方がマシって嫁ぎ先だったりするわけで……。
 エディと結婚する気があれば駆け落ちはあり。結婚する気がなければ……。
「となると、偽装婚約の方か……」
「「偽装婚約ーー?!」」
 また二人が叫んだ。
 そんなに驚くことはないと思うのね。婚約だけなら、もう3回もしてるプロだから。3回も4回もそう変わらないと思うんだ。

 昼食後、メイシーは代読屋の仕事で出かけ、私とアルは外周り。看板の文字書きのお願いだ。とはいえ、脚立に乗って文字を書くのはアルの仕事で、私は念のため脚立を支えているだけ。体を鍛えているからなのか、アルは脚立の上でもぐらつくことなく作業を進めている。
 ぼんやりアルの手元を見上げて気が付いた。
「あ、アル、もしかしてその看板は金具につりさげてあって取り外せるんじゃない?」
「本当だ。取り外せますね」
「じゃぁ、そういう看板は取り外して代筆屋のに持って帰って作業させてもらおう。固定されてる看板だけはその場で書かないといけないけど」
 看板を取り外す許可はすぐにもらえた。明日からは、取り外せる店の看板を朝一番に回収して、店番しながら看板書き。午後に看板の取り付けと、固定看板への作業をしようということになった。うん、少しは効率がよくなった。
「こんにちは」
 店に帰る途中声をかけられ振り返ると、ドナさんと、4,5歳くらいの小さな子供がいた。ドナさんの子供かな?
「看板書きの帰り?」
「はい」
「いつも二人で作業するなんて、仲がいいわね。ふふっ。二人は夫婦じゃないのよね?」
 ふっ、夫婦?え?私たちそんな風に見えるの?
「兄妹です」
 アルが答えた。そうだ、ライカさんにそういう設定で話をしたことあったっけ。護衛とお嬢様なんて言えるわけないもんね。
「そうなの。仲がよい兄妹で羨ましい」
「ママー、早く帰ろう」
 子供がドナさんの服の裾を引っ張った。
「ちょっと待ってて、ほら、これで遊んでて」
 ドナさんが、カバンから緑の小さな野菜を二つ取り出して渡すと、
「お野菜一つ、くださいな~、何のお野菜上げましょう、緑のお野菜、くださいな~」