婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 ライカさんが、テーブルの上にランチと果実水を置く。
 ぽつぽつと別のお客さんも入り出した。
 側室だとか婚約だとか、人に聞かれては困るような話はエディも私も続けることができない。
「俺が帰っている間に、さっき話したことを考えてくれ」
 とだけ言い、あとはその間トーマスさんに代読屋を任せるための引継ぎ事項の確認を進める。トーマスさんでは護衛できないから代筆屋にエディが来ていた日は休みにすること。ついでに、メイシーと私が一緒に休みを取れるように代読屋の休みを合わせることなど。
 自分が離れている間のことも、問題がないようにきちんと考えてくれるんだ。やっぱりエディはすごいなぁ。

■28

「何の話だったんですか?」
 メイシーが、自分とアルの分のお昼ご飯を代筆屋の奥の部屋に運び込んだ。
 現在、3人でテーブルを囲んでいる。
「エディが領地に行っている間のこと。ちょうど二人にも伝えないといけなかったんだよね」
 と、代読屋と代筆屋のことを二人に伝える。二人は、黙々と昼食を口に運びながら私の話を聞いていた。
「それで、他には?」
 メイシーの目が鋭く光る。
「他と言うと?」
 メイシーがちらりとアルを見た。
「店の話なら、わざわざリリィーと二人で出かける必要はありませんでしたよね?」
 エディの言葉を思い出して顔が赤くなる。
 そうだ。私……エディに告白されたんだ。それから……。
「駆け落ちしようって言われた」
「「駆け落ちーーーっ?!」」
 私の言葉に、メイシーとアルが仲良く叫んだ。
「駆け落ちと言っても、偽装駆け落ちだよ。もし、側室になりたくなかったら助けるよって」
 メイシーが、なんだという顔をして「偽装ですか」とつぶやいた。
 一方、アルは怒りに震える顔を見せる。
「何をかんがえているんだ、エディのやつ。知らないわけはないだろうに……」
 なんでそんなにアルが怒るんだろう?
「偽装なんて言葉を使って、計画的にリリィーをだますつもりか?」
「あっ!」
 メイシーが何か気が付いたように口に手を当てた。
「え?何?」
「偽装だろうと、駆け落ちは駆け落ちですから……貴族令嬢が異性と二人で過ごしたという事実が残るので……」
 メイシーの言葉に、やっと私も気が付いた。
「うわー!そうだった!その異性と結婚するか一生独身でいるかしかないじゃんっ!」