婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 こんな感じかな?と顔を上げると、ニヤリと楽しそうに笑うエディの顔が映った。
「そうか。そばにいたいか。じゃぁ、婚約しよう」
「エディっ!卑怯な手を!そんなに代読してほしいなら、僕が読んでやる」
 アルはそう言うと、私の紙を持つ手を少し自分に寄せた。すぐ隣に立つアルの声が耳の近くで響く。
「好きです。リリィーのすべてが好きです。どうか僕を、リリィーのそばにいさせてください」
 ドキン。
 え?何?
 顔がかーっと熱くなってアルの顔が見られない。紙に私の名前なんて書いてなかったよね?
 アドリブ?そうか、読む相手の名前を入れるて読んであげるというのも代読ではありっていうこと?
「アルは代読失格だな。こんな短くて簡単な文さえ正確に読めないとは!」
 エディが挑発的な言葉をアルに向けた。
 そうなの?やっぱり、アドリブはダメなんだ。代読って難しい……。
 って、二人が何やらにらみ合ってる。アドリブについて敵対してるのかな?
「そうだ、メイシー大変って何があったの?」
 二人のことは無視してメイシーに声をかける。
「ええ、その……先ほどの女性ですが、ラブレターをくださるような男性がいるはずなのですが……。エディに代読してもらっているうちに、うっとりとした表情になって、その……」
 いまだににらみ合いを続けているエディとアルの顔を見る。
 エディはいい男だ。声もいい。
 アルだって……。さっきみたいに、代読とはいえイケメンに美声で愛を語られたら……。
 カーッと、せっかく引いた熱が戻る。うわー、思い出しちゃった。アルの「リリィーの全てが好きです」って言葉。うん、確かに、ちょっとときめく。
 アルに好きな人がいるって知らなかったら、勘違いしたかもしれない……。
「メイシーの言いたいことはわかったわ。ラブレターの代読は、同性に読んでもらうべきよね……。もしくは、もう少し高齢の……」
 ロッテンさんの顔が浮かんだ。さすがに代読屋の仕事を手伝ってもらうわけにはいかないなぁ。
 人を雇うほどもうかってるわけじゃないし。文字を読める人となれば、それなりの給金が必要な人材だろうし……。
「高齢の人材なら心当たりがある」
 エディが私とメイシーの会話に入ってきた。
「本当?」
「トーマスだ」