婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 メイシーは、慌てた様子で、私の言葉を否定した。
「そんな、私欲のためじゃありませんよっ!リリィー、エディは確かにちょっと言葉遣いが横柄なところはありますが、優しくて良い方ですよ。無償で教会への朗読は続けてますし、代読の仕事も、私に無理のないように選んで受けてくださっていますし」
 ん?
 メイシーは随分エディの肩を持つのね。
 私よりもずっと長い時間代読屋で一緒にいるから、よくエディのこと知ってるのね。
「じゃぁ、メイシーは、なぜエディは私と婚約しようとしてると思うの?」
 私の言葉に、メイシーは顔をこわばらせた。
「そ、それは……あの、……」
 何だろう?知っていて言葉を濁しているのか、分からなくて言葉に詰まっているのか。
 ふっとメイシーが顔をそらした。
「わ、分かりません……」
 そっか。分からないのかぁ。
 うーん。私と婚約して、エディには何の得があるのか。公爵の爵位くらいしかないのになぁ。
 待てよ、損得を考えてないとしたら?私への贖罪?
 3度も婚約破棄なんて不名誉な私に申し訳がなくて、2度目の婚約破棄はなかったものにしようとしてくれてるの?婚約休止みたいな感じに?
 ……。
 罪滅ぼしのために婚約なんて、エディも馬鹿だねぇ。
 エディくらい容姿も頭脳もよくて、領地経営の力もあるんだから好きになった女性と幸せになれるだろうに。うん、でも大丈夫。
「エディのためにも、私、1日も早く素敵な3S男子と婚約してみせるわ!」
 私が3S男子と婚約すれば、エディも罪滅ぼしなんてしなくたって済むんだから。自由にしてあげるっ!
 代筆屋や代読屋を協力してもらってることで、婚約破棄の件なんて十分清算済なんだし!
「はいぃ?リリィー、一体どうして、別の男性をゲットすることがエディのためなんですか?」
 メイシーがちょこっとお茶を吹き出した。
 ん?そんなに変なこと言った?
 メイシーは立ち上がって、本棚から本を1冊持ってきた。
「代読屋でお世話になっているご婦人からお借りした本です。早急にお読みください!」
 早急?返却日の約束が迫ってるのかな?
 『再会~あなたを思って10年が経ちました』
 タイトルからすると恋愛小説?

■26

「た、た、た、大変です、リリィー!」
 次の日、代筆屋のドアから子爵令嬢らしからぬ慌てっぷりでメイシーが飛び込んできた。