婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

「ですが、メイシー様、椅子に腰かけるときの動作はもう少し訓練が必要なようですわね。腰を曲げがって不格好でしたわ。リリィー様は疲れた顔をすすぎです。例えどんなに疲れても、表情に見せてはなりません」
 ビシッっとロッテンさんの指導が入る。
「「はい」」
 私とメイシーががっくりと肩を落とす。
「それから、エディー様、トーマスより正体をお嬢様に明かしたとお聞きいたしましたが」
 ロッテンさんの言葉に、メイシーが小さく声を上げた。
「正体を?」
 そうだ、まだメイシーにはエディが実は私の2番目の婚約者だったエドワードだったって教えてなかった。
「そうだね。明かしたというよりはバレた?というか……」
 エディはそこで言葉を切って、アルをちらりと見た。
「やっと気が付いてもらえた、といった方がいいかな」
 ん?
 そういえば、アルも貴族なんだよね?エディは仮にも伯爵家当主だから、貴族なのに顔を知らないというのはちょいと問題なのかな?
 それで、気が付かないアルをエディが見た?
 え?私やメイシーはまだ成人してないからね?16歳で成人して社交界デビューしてからは、貴族の顔を覚えないといけないけど、今はまだいいいの。セーフなのっ!
 もちろん、名前とつながりは勉強してるし、髪の色などの特徴も勉強してるけど、顔は見ないと覚えられないでしょ?
「ではエディ様……今後はいかがいたしましょう?番頭……いえ、代読屋としてのお仕事や、エドワード様として接するべきなのか」
 そっか。
「いや、今まで通りで構わない。この2年館は、身分の上下は一切関係なしで接すると……リリィーが言ったんだよな、アル?」
「ああ、そうだ」
 二人のやりとりで、ロッテンさんが承知いたしましたとうなづいた。
「アル様もご納得であれば、今まで通りの対応をさせていただきたいと思います。エディ様もアル様も、リリィー様同等の扱いをさせていただきます」
 ふおっ、ロッテン、それはもしかして
「では、遠慮なく……。エディ様のダンスは女性を振り回しすぎです。アル様は、女性を褒めるための代表的な花の名前くらいは覚えておく必要がございます」
 ビシッとロッテンさんの指導が入る。
「「はい」」
 エディとアルの背筋がぴぃーんと伸びた。