婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

「こんにちは」
「いらっしゃい、ドナさん!」
「この間はありがとうね!本当に助かったよっ!バカの一つ覚えで悪いけれど、これ、お礼。受け取っておくれ」
 ドナさんが、また籠いっぱいのパンを持ってきてくれた。
「うわー、いいの?ありがとう。お礼なんていいのに。ドナさんが宣伝してくれたおかげで、名前を書いてほしいってお客さんが増えたの!」
「それは良かった。もっと宣伝するよ!」
 そうだ!お願いしてみよう。
「あの、ドナさん……看板に文字を書かせてもらえませんか?パンの絵の下に、パンという文字を……」
「え?それは構わないけど、むしろお金を払わなくていいのかい?」
「ありがとうございます!街の人たちにもっと文字に親しんでもらって代筆屋をアピールすることが目的なので、お金は必要ありません。ただ、誰かになんて書いてあるか尋ねられたら、パンと読むと教えてあげてもらえれば……」
 ドナさんが快諾してくれたので、早速ドナさんの店に行った。
 脚立に乗って、高い位置にある看板に文字を書きこまなくちゃいけないんだけど……。
「リリィー、僕が書くよ。リリィーは、必要な物を手渡してくれる?」
 アルが、運んできた脚立を広げ、さっと乗っかった。
 紙にはペンでさらさらとかけばいいけれど、木製の看板はそういう訳には行かない。先が丸くなっている鉄ペンを力を入れて木に押し当てへこみを作る。そこに濡れても流れ落ちない油で溶いたインクを塗りこむ用にして書くのだ。
 パン屋の店先で作業していると、何だ何だと、ご近所さんが見に来た。
「看板の絵の下に文字を書かせてもらっているんです」
 私の言葉に、ドナさんが付け加えてる。
「代筆屋の宣伝すればタダだって言うからさ~、やってもらってるんだよ」
「へぇーいいねぇ。うちんとこもやってくれないか?文字入りの看板なんてカッコイイじゃないか。もちろん、代筆屋の宣伝はしっかりさせてもらうよ!」
 肉屋のご主人の言葉に、笑顔で返す。
「本当ですか?ぜひ、書かせてください。肉屋って書けばいいですか?」
「何だ何だ?」
 ワイワイと人が集まって来て、気がつけば、他のお店の看板にも文字を書かせてもらえることになった。やった!
 識字率アップと宣伝と2つの効果が期待できるよね?

■22

 看板作業そ3軒終えたところで、店に戻ろうと代読屋の前を通る。