婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 馬車の中でもぽんぽんしようとしたら、さすがに止められた。
「馬車の振動で陶板印が割れたらどうするんですか!」
「インクを乾かすために置く場所がないだろ?」
 メイシーとエディ二人に、あきれ顔をされた。だって、馬車の中って暇なんだよ。
 自分たちで写本して持って来た本を読んだり、おしゃべりしたり。王都まであと2日というところで、
「リリィー様、そろそろ公爵令嬢らしい立ち振る舞いに戻った方がよろしいかと」
 ロッテンさんが屋敷にはいて厳しい指導が待っている。
「メイシーも子爵令嬢としてがんばらなくちゃね。王子様のお眼鏡にかなうように」
 いつものように軽口を言ったつもりが、メイシーは嫌そうな顔を見せずに真剣な表情になった。
「リリィー様、何があっても、公爵令嬢として振舞えるように気を引き締めてください。第二王子の快気祝いですから、元婚約者のリリィー様にも注目が集まるでしょう」
 うっ。
「私、行かないとダメかな?」
「絶対に行かないとダメです!これが、最後のチャンスかもしれないんですからっ!」
「は?チャンス?」
 すごい勢いで、メイシーが訳の分からないことを言い出した。
「えっと、リリィーと一緒に出席する最後のチャンス?」
 明らかに何かをごまかすようなメイシー。
 あれだけ否定していて、もしかして第二王子に見初められる気満々だったりして。そういえば、王子様と出会いたいとか言っていた気がする。
 私は山賊の方がいいって言ったっけ。それで、アルを初めて見たときに山賊って言っちゃったのよね。

 王都に到着して2日は、ロッテンさんによる教育と侍女たちによる磨き上げに費やされた。
 仮にも国を挙げての盛大なパーティーに出席するのだ。公爵令嬢として恥ずかしくないようにと、口を酸っぱくして言われ続ける。もちろん、メイシーも道連れだぞぉ。侍女立場なんて許されぬ。私の友達子爵令嬢として、一緒に磨き上げられるがいい!
 そして、第二王子の快気祝いのパーティー会場へ。
 くらいの低いものから入場するというマナーがあるため、公爵令嬢である私が会場入りしたときには、すでにたくさんの人であふれかえっていた。
 王城の大広間と中庭を使った盛大なパーティーだ。会場は広いが、参加者も多くてごった返している。
「さぁ、あいさつに行こうか」
 私の手を取るエディ。