婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

「領地での仕事を無理して片づけて、リリィーのために領都に来てくださっただけでも大変なことなのに。一緒にいられると思ったリリィーとは、代筆屋と代読屋で別々に活動することになって、それでも文句ひとつ言わずに代読屋の経営に取り組んでくれて……」
 うっ。
「領地から戻ったときも、馬車ではなく、馬で駆けつけられましたし。きっと、あまり休みを取らずに何度か馬を変えながら駆けつけたんでしょう」
 ううっ。
「それに、なんと言ってもリリィー様を見る目が愛しくて仕方がないって語ってました」
 メイシーが素敵な本を読んだ後の満足したような表情をする。「ああ、恋っていいわぁ」って何度となく恋愛小説を読んだ後にしていた顔だ。
「そうなの、か、な?」
「まったく、本当リリィー様は鈍いんですから。あんなに二人に熱い視線を送られていたのに、全く気が付かないんですからっ!」
「二人?他にも私を好きでいてくれた人がいるの?」
 驚いて声を上げると、メイシーが私以上に大きな声を出した。
「あっ、えっと、あれです、あれ」
 あれ?
「ト、トーマスさんっ」
「え?トーマスさんが私のことっ?」
「そ、そうです。トーマスさんが、主人であるエディの気持ちに答えてくださいって熱い視線を、リリィーに送っていたんですっ」
「熱い視線ってそういうことか……。そうだよね。急に私がモテまくるわけないよねぇ……あはは」
 トーマスさんは昔婚約していた時から私とエディのこと知ってるから……。ずっと心配してくれてたのかな。
 メイシーがホッとしたように胸をなでおろしている。メイシーも、今まで私が気が付かないのにずっと気をもんでいたのかな?

■47

 すでに手紙で事前に知らせてあることもあるせいか、両親への報告はあっさりしたものだった。
 王都には1週間ほど滞在して、エディの領地へと出発。
 見送りに立ったお母様がお父様にドヤ顔を見せている。
 お父様に何かささやいているが、そこ言葉は私の耳には聞こえなかった。
「ほらね、だから言ったでしょう?「娘は、自由にするふりをして手の平で転がすもの」だと」

 エディの領地に着いた。
 王都から馬車で10日ほどの距離だ。
「お疲れでしょう、まずはごゆっくりお休みください」
 トーマスさんが笑顔で出迎えてくれた。