婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 エディと一緒に訪れていたエディの父親。タズリー公爵が捕縛され、投獄されたと聞いたからだ。
 その時呼んでいた本に、無実の罪で投獄された主人公の恋人がが拷問されるという描写があった。エドワードがそんな目にあったらどうしようって。いつも笑顔で、一緒に遊んでくれた優しいお兄さんが拷問されるのを想像したら怖くなった。一人っ子の私は、本当のお兄さんのような存在になっていたから……。
「男なら、自分のプライドを捨ててでも好きな子を守るべきだった。もう、俺は後悔したくないんだ、リリィ」
 好き?
 エディは私のことを、本当に好きでいてくれるの?
 でも、私は……。
 エディに気持ちを返すことができない……。
「エディのことは、兄のようにしか……」
 ぽんっと、エディの手が頭の上にのった。
「そうか、嫌われてないなら十分だ!」
「エディ?」
「言ったろ?利用しろと。俺は、リリィーが幸せになれるなら何でもするさ。俺を利用してリリィーが幸せになれるならそれでいい」
 そんな……。
 エディを利用するなんて……。
「リリィーは優しい。どうせ、俺を利用することを悪いと思ってるんだろ?」
 図星だ。
「遠慮するな。俺も、この状況を利用しているんだから。リリィーと一緒に過ごす時間を作るために利用してる。一緒に過ごせば、俺のこと好きになるさ」
「エディ……、本当に……いいの?」
「リリィ、一つ忘れてないか?俺たちは貴族だ。政略結婚なんて当たり前の世界に生きてるんだぞ?嫌っていようが、憎しみ合っていようが結婚することなんてざらだろ?」
 まぁ、だからこそ、既婚女性も男性も愛人には寛容なわけなのだが……。何かゆがんでるよね。
「それが、兄のようにとはいえ、嫌われてないなら上等だ。それに、リリィーはいつかきっと俺を好きになるからな」
 そうなのかな……。
「そうかも……しれない……」
 エディは素敵な人だもの。
 アルのこと忘れたら、エディのこと好きになるかもしれない。
 ふっ。
 好きになれるとかなれないとか、そんなことをまだ考えている自分がおかしい。
「でも、エディ」
 私は、エディに伝えようとしていたことを思い出す。
 意を決して、エディの紅茶色の瞳をまっすぐ見た。
「私、公爵令嬢として、公爵領に住む人たちを守りたいの。だから、結婚するなら好きな人よりも公爵領を守ってくれる人を選びます」