婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 だから、少しでも早く、アルの前から姿を消さなくちゃね。
 そして、私は公爵家の一人娘としての務めを果たさなければならない。

 恋だの愛だのから卒業して、信頼できる時期公爵となる旦那様を得るのだ。
 私の不名誉な噂が広まらないうちに。
 ……世間が、事件を知らない間に。

■45

 次の日の午後、エディが到着したというので、ティータイムを一緒にすることにした。
 いつもは、私とメイシーとエディとアルの4人でお茶をしていたけれど……。アルと顔を合わせるのはつらい。
 だけど、メイシーとエディと3人でお茶をすると、アルだけ仲間外れにしたようで気持ちが落ち着かないのでエディと二人でお茶することにした。
 まずは、王都に戻ること。その際、代筆屋と代読屋は誰かに続けてほしいことを相談した。
「そうですね、正直なところ代読屋に関してはもうけは出ていますが、代筆屋は難しいでしょう。ですから、縮小して代筆屋と代読屋を一つの店にすればなんとかなるでしょうね」
 エディが、どんどんと問題点や改善方法を上げていく。
 やっぱり、エディはすごい。有能だ。
 きっと、領地の経営の手腕もすごいのだろう。
 ……。

 一通り、代筆屋の話を終えると、沈黙が流れた。
「エディ……、その、事件の話は、聞いた?」
 エディはいつも通りの態度。
 もしかしたら、何も知らないかもしれないと思って尋ねてみた。
 エディは少しだけ眉を上に上げると、何でもないことのように口を開いた。
「ああ」
 とだけ。
 大変だったねとも大丈夫だったかとも言わない。
 なんでもないことだったんだって。大変なことでもかわいそうなことでも、大丈夫じゃないことでもないって言われてるようで少し気持ちが楽になる。
「トーマスから聞いた」
 そうか。トーマスさんがいたんだから私が行方不明になった騒ぎは耳に入るよね。
 また、沈黙が流れる。
「前に、エディが言っていたこと……こんなことがあったけれど……まだ有効?」
 遠回しな言い方に、エディが首を傾げた。
「婚約……」
 ぼそりと小さな声でつぶやく。
「リリィー!」
 エディが椅子から立ち上がり、私の手を取りひざまずいた。そして、手の甲にキスをする。
「結婚してください」
 エディのプロポーズ。
「ほ……本当に、私なんかでいいの?」
 私の言葉に、エディが笑った。