婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 呼びに行ったメイシーはアルのお茶でも取りに行っているのかいない。
 アルは、誰が整えたのか前髪がきれいに後ろに流されていた。
 なんだ……。私がピンでとめる必要ないね……。
 アルの表情は暗い。寝込んでいた私以上にやつれているように見える。
「アル、助けてくれてありがとう」
 できるだけ自然にと、微笑む努力をする。
 もう、心配しなくていいよ。私は起き上がれるようになったしと伝えたかった。
 だけれど、うまく伝わらなかったみたいで、アルは苦痛にゆがめられたような表情を見せた。
「僕のせいだ……。僕が、リリィーの元を離れたから……」
 ああそうか。
 アルは、それを悔いているのか……。
「いいえ、別の護衛をちゃんと連れて行きましたし。仕方なかったのです」
 小屋にはもっと男がいたし、アルでも同じように倒されたかもしれない。
 そうすれば、代筆屋に残した紙から私を見つけ出す人がいなくて、手遅れになっていたかもしれない。
「むしろ、ああしていち早く駆けつけてもらえて感謝してます。アルだから、私をあんなにも早く見つけてくれたのでしょう?」
 私の言葉に、アルはもっと苦しそうな顔になった。なぜ?
 アル、自分を責めなくていいのに。
 私は、そんなに大した怪我を負ったわけじゃないよ?
 それに……私は、汚されてない。
 だから、アル、苦しそうな顔をしないで……。笑って。青空のような瞳を輝かせて?
 アルは、私の前に片膝をついた。
「リリィー、どうか……」
 私の手を取る。
 ああ、なんてことだろう。アルのこの体制は……。
「僕と結婚してほしい」
 アル……。
 ねぇ、アル、プロポーズするなら、そんな悲壮な顔しないで?
 私……アルのことが好きだよ。
 でも、そんな顔でプロポーズされても……、私……。
 はいともいいえとも言えない。
「痛っ」
 本当は痛くないけれど、肩の傷が痛んだふりをして声を上げる。
「あっ、ごめん」
 アルが慌てて手を放す。
「メイシーを呼んでもらえるかな?」
「すぐに!」
 アルが焦って部屋を出て行った。
 そしてすぐにメイシーを伴って部屋に戻ってくる。
「リリィー様、大丈夫ですか?」
「ええ、包帯を変えてもらえる?」
 そう言えば、アルは部屋を出ていくしかない。
 
 ありがとう、アル。
 私のことをあんなに思ってくれて……。
 でも……。