婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

「ははー、じゃぁ、さっそくいただくか!」
 もう一人の男も私の横に移動してきた。
 怖い。
 やだ。
 助けて……。
 男の手が伸び、スカートの中に入れられ、太ももを撫でられる。
 何これ、気持ち悪い。怖い。
「すべすべの肌だなぁ」
「だめ、やめて、リリィーちゃん、私が変わるからっ、その子に手出しをしないで!その子は可愛いでしょ、だから商品価値が高いよ、私が一番商品価値が低いから、だから」
 ライカさん、だめ、自分が犠牲になろうなんてそんなこと。
「だめ、ライカさん……」
 気が付けば、涙で顔がぐっしょり濡れていた。声もろくに出ない。
 怖い、気持ち悪い。
「うるせーよ、さっきから!気分が出ねーだろうが!」
 バシンと、頬に激しい衝撃を受ける。
 殴られたんだ。
「ライカさん、ライカさんに触らないでっ!」
「うるせぇって言ってんだろ!黙れ」
 逆側の頬を殴られる。
 あまりの勢いに、幌を貼ってある支柱に激しくぶつかり、折れた。
 折れた支柱の先が、肩をかすめ、服を破って皮膚を傷つける。
「馬鹿、何してんだよ。馬車を壊すなよ」
「こいつが悪いんだ」
「これ以上馬車を壊すわけにはいかねぇ。外でやろうぜ」
 男がライカさんを連れて外に出る。
 臭い男も、私の腕をとって外に放り出す。
「きゃっ」
 両手を縛られた状態ではうまく降りることができずに、そのまま落っこちて地面に倒れこんだ。
 痛い。
 殴られた頬も、切った肩も、打ち付けた体も……。
 男が、そのまま私の体に馬乗りになった。
 痛いよ。痛い……。
 アルなら、自分の体で落下する私をかばってくれるだろう。
 アルなら、怪我をした私を心配してすぐに治療してくれるだろう。
 アルなら、私を殴ったりはしない。
 アルなら……。
 とめどなく流れる涙。
 もう、何も考えられなかった。ただ、月明りの中、アルの瞳を……。青空を思い浮かべていた。

 助けて。

「やめろーっ!」

 蹄の音と、アルの声。
 幻聴?

「ぐあっ」
 私にのしかかっていた男が、うめき声とともに吹き飛んだ。
「リリィー!」
 アルの手が、私の体を救い上げる。
「何だてめぇ!」
 男が、アルに殴りかかろうとする。
 アルは、あっという間に、殴りかかろうとした男も吹き飛ばした。
 ああ、アルが助けに来てくれたんだ……。

 ホッとして、意識を失った。