婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 疲れているはずなのに、全く眠れない。外では男たちがたき火をして、簡単な食事をとっているようだ。話声が聞こえる。一体何人いるのだろうか。
 小屋で見たのは3人だった。じっと、話声に耳をかたむける。
「ちょっと様子を見てくるか」
 下品な笑い声の男が幌馬車に近づいてきたようだ。
「どれどれ」
 幌の後ろが開き、月明りに照らされて、男の影が馬車の中に入り込んだ。
 中が暗いので、月の光も明るく思える。
「3人しか収穫がなかったと思っていたが、思いもかけず2人増えたんだったな」
 男が、幌に乗り込んできた。
 臭い。
「おい、手を出すなよ、商品価値が下がるだろう」
 馬車に乗り込んだ男に、別の男が声をかけた。
「元々、商品は3つだと報告してあるんだ。残りの2つは、無かったものだから価値も関係ねぇだろ?」
 幌馬車に乗り込んだ男がぎししと笑う。
「くっ、確かに、そりゃそうか。仕方なく連れてきた二人はもともと価値の低い女だったと言えば済む話だな」
 もう一人の男も、馬車へと乗り込もうとする。
 今から何が起きるのか、皆で恐怖に固まった。
「誰にするかな」
 男が、一番小さな少女に手を伸ばした。
「いや、やだ、いやだ……」
 ガタガタと震えて、少女は泣き出す。
「やっ、やめて!まだ成人前の子に手を出すようなことっ」
 ライカさんが声を上げる。
「なんだ、お前がしてほしいのか?積極的だな」
 もう一人の男が、ライカさんに伸びた。
「や、やめてください……」
 小さな声だけど、それでも声を出すことができた。
 目じりには涙がたまっている。
 さっきから、怖くて怖くて、体の震えが止まらない。
 だけれど、みんなを、領民をこんな目に合わせたのは私だ。
 皆が襲われるのを黙って見ているわけにはいかない。それが、貴族の役目だ。
 そして、私は……。貴族は、もうさらわれた時点で汚されたものとみなされる。
 本当に汚されたかどうかなんて、関係ないものとして扱われるのだ。市井の皆は違う。守らなくちゃ。
 怖い。だけど……。
「私が、犠牲になります。だから、皆には手を出さないで……ください」
 震える声で、必死に主張する。
「なんだ、二人相手にするってのか?」
 少女に手を伸ばしていた男が、顔をこちらに向ける。
 臭い。
 一体何の匂いなのか、吐きそうなほどの異臭が、男から発せられる。