婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 それが、カールさんだけなのか、他にいたのかはわからない。
 貴族でなければ身分差ゆえに反対されているから駆け落ちしようという言葉は嘘になる。
 嘘をついてなぜ駆け落ちを?
 そもそも、本当に駆け落ちなのか?
 駆け落ちではなく、連れ去られたとしたら?

 人身売買……。
 若い女性を売り買いする影の組織があると聞いたことがある。
 貴族のふりして、女の子をひっかけ、駆け落ちしようとささやく。誰にも見つからないように、落ち合おうと誘い出し、拘束。
 ……。市井の女性は、貴族に憧れが強いから……ついだまされてしまうことがあるのではないだろうか?
 ライカさんは、カールさん……カールが、貴族じゃないことを見破ってしまって連れ去られた?
 フードの男が言っていた少ないというのが人数だとすれば……。
 ライカさんも頭数に入れるってこと?

 単に私の考えすぎならそれでいい。
「あった、三本杉」
 三本杉が見えた。
 その先に小さな小屋が見える。
 護衛に、馬をそちらに向けて走らせてもらう。小屋の周りには人影はない。小屋には、中の様子をうかがえるような窓もなかった。
 馬を下りて、ドアをノックする。
「すいません、誰かいませんか?」
 返事はない。
 だけれど、ドアに耳をつけると、かすかに物音が聞こえる。
「誰か、いませんか?ライカさん、ライカさんはいませんか?」
 ドスンッ。
 小屋の壁が音を立てた。
「馬鹿ッ、やめろっ」
 それに続いて、男の怒声が聞こえた。
 やっぱり、部屋の中に誰かいる。
「ライカさん、ライカさんがいるんですか?すいません」
 ドアをたたくとしばらくして、小屋の裏から、顔を隠した男が3人ほど出てきた。
「なぜ、ここにあの女がいることを知っている」
 男の一人が口を開いた。
「やっぱり、ライカさんいるんですね!」
「お前は、代筆屋の……そうか、おい、捕まえろっ!ちょうどいい。これで一人商品が増える」
 商品?
 やっぱり、こいつら……!
 男の手が私に伸びた。
 護衛が、かばうように剣を抜いて構える。
 だが、それよりも早く、男の一人が護衛の足を木の棒で思い切り打ち付けた。
 膝をついた護衛の後方から、別の男が後頭部を殴りつけると、護衛が地面に倒れこんだ。
「おい、そいつは縛って小屋ん中放り込んでおけ。馬はちょうどいい。使わせてもらおうか」