婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 前髪をかきあげると、アルの男らしくて優しい目元が現れる。この顔、大好き。私だけがこうして、前髪を上げた顔をまじかで見られるんだよ?ラッキー。……ああ、違うか。アルの好きな人も……かな。好きな人とはもう、恋人同士なのかな?あれ?まずは、そこから確かめないと。もうすでに婚約してたり、婚約間近だったりする恋人関係なら、アルを忘れる努力を始めないと。時間は有限だし、1年半ちょっとで別の人好きになるんだっ!
「今日こそ、たくさんお客さんが来るといいですね」
 アルがクスリと笑った。
「ふふ、大丈夫よ。ウィーチェルさんっていう力強い宣伝大使をゲットしたんだもん。きっと少しずつ増えるはずよ……たぶん……」
「たぶん、ですか。増えるといいですね」
 って、軽口をたたきあってる場合じゃない。確かめなくちゃ。
「アルはどうなの?好きな人に、ラブレターを書いたりしないの?ラブレターって恋人や婚約者にも贈ったりするものでしょ?」
 流れ的に、不自然な質問じゃないよね?
「ええ、そうですね……付き合うようになっても、婚約しても、結婚しても、ずっとラブレターを贈りあえるといいなぁとは思います」
 今の言葉だと、まだ付き合ってない?片思いってこと?
「アル、告白しないの?」
 首をかしげて尋ねれば、アルは少し困った顔を見せた。
「もう少し、自分を売り込んでから気持ちを伝えます」
 アルはそのあとに言葉をつづけた。
「まだ、時間はありますし」
 ちょっ、待って!時間があるって、いったいいつ告白するつもり?
 恋人同士になったなら私はあきらめられるし、振られたなら私は頑張るし……って、アルがその人に告白してくれないと動けないんだけど!
 私にはそんなに時間がないんだよ!もっとガンガン売り込んで告白しちゃってください!
 って?あれ?そもそも、アルはいつ、その人に会って自分を売り込んでるの?……見たことない。えー、まさか!仕事が足かせになってる?
「アル、代筆屋と護衛の仕事、もう少し休みを増やしましょうか?えっと、そうね、半年に一度くらいは1か月くらいまとまった休みがあってもいいかもしれないわね?……ね?」
 休みをあげるから、その人に会って関係をはっきりさせておくれ!
 と、休みを提案したら、アルの瞳が揺れた。
「リリィーは……僕が一緒にいたら迷惑なの?」