大陸の北西に、吹けば飛ぶようなちっぽけな国、ディンビエはある。

 隣には、周辺諸国から軍事大国と恐れられるロスティがあるが、彼の国との国境を覆うように魔獣が棲む魔の森があるおかげで、争いになるようなことはない。

 ディンビエは、草原と騎馬民族の国だ。国土の殆どが草原であり、町とも呼べないような小さな村があちこちに形成されている。

 それは、それぞれの部族が、それぞれの地に根付いたからだと言われている。

 魔の森からほど近い村、トルトルニア。

 こちらも例に漏れず、トルトルと呼ばれる部族が作った村である。

 トルトルとは、昔の言葉で『小さき人』を意味する。

 その意味のとおり、トルトルニアの人々はみな、小柄だ。

 他所の村からは『子どもの村』なんてバカにされたりもするが、その弓の腕前は一級品である。

 かつては魔の森を馬に乗って駆け回り、魔獣を狩っていた部族だ。気付けば胸に矢が刺さっていた、なんてことが嫌だったら、口を(つぐ)むべきだろう。