対するマルゴーリス家は、ここ数代に渡って政治家や外交官を輩出している名家である。

 歴史ある一族ではないが、国内では名の知れた家だ。

 田舎の大した家柄でもないヴィリニュス家に嫁ぐには、マルゴーリス家はあまりにも良家だった。

 だが、レオポルドを見て一目で気に入ったルタは、両親を説得してこの家に嫁いできたらしい。

(そこまで好いてくれているってことだよね。だから、いつも兄さんのために着飾っているんだろうなぁ)

 好きな男の前では、いつだって可愛くありたいものよ、とリディアは言っていた。

 あいにく、エディには好きな男なんていなかったし、可愛くありたいなんて思いもしなかった。

 だから、それを聞いたエディは、「何を言っているんだか」と一笑に付したのだ。

(そう。僕は何を言っているんだって笑ったんだ……だけど……)

 エディの脳裏にふと、先日の一件が(よぎ)った。