リディアは言っていた。

 どこぞの国にはバレンタインという女の子が男の子に告白をする日があって、既にお付き合いをしているカップルの場合は、女の子が自らをラッピングして「私を食べて」とプレゼントするらしい。

 それを聞いたエディは、ミハウから無理やり押しつけられた恐怖小説のワンシーンを思い出していた。

 気が触れた医者が、余命幾ばくもない患者を「忘れないために」とか言って次々食べていく……そんな内容だったと思う。

『リディア、それって人肉嗜食(カニバリズム)って言うんだよ。ミハウが持っている本に、そう書いてあった』

『違うわよぉ。そういう意味じゃないの。エディはまだお子ちゃまだから分かんないだろうけど、そういう気持ちがあるの、女の子には!』

『お子ちゃまって……僕、リディアとそんなに歳離れてないよ?』