目の前の男の死角で、リディアはバシバシとエディの背中を叩いた。

「あ、あの方は……! 黄薔薇の騎士、アルストロ様じゃないの」

「おや、私のことをご存知でしたか。はじめまして、リディア・シャウレイさん。私の名前はジョージ・アルストロ。現在は騎士ではなく、魔獣保護団体に籍を置いています」

 ジョージと名乗ったその男は、優雅に一礼した。

 なんというか、いかにも騎士といった風の気取った礼である。

 トドメとばかりに眼鏡男子の必殺技『眼鏡クイッ』を繰り出されて、リディアは「はぅ」と声を漏らした。

(おいおいおーい、リディアー? 今日は僕が恋人なんだから、ジョージ様に惚れ惚れしている場合じゃないぞー?)