結局、エディはリディアの命令(おねがい)を断りきれなかった。

 断ったつもりでいつものように屋根で日向ぼっこをしていたら、外に見知らぬ馬車が到着していたのだ。

 晴れ渡った空の下、金模様が施された馬車は輝いているように見える。

 まるで、舞踏会へ行くお姫様のための馬車のようだ。

 御者は人間に見えるけれど、実は魔女が変身させた動物かもしれない、なんて思うくらいには、その馬車は豪奢だった。

 明らかに、ディンビエのものではない。

 よく見れば、馬車にはロスティの紋が刻まれていた。

(ロスティからの馬車……ということは)

 嫌な予感がして、エディの背中を冷や汗が流れていく。

 口の端をヒクヒクさせながら、エディがじっとしていると、馬車の窓が唐突に開いた。