「ユウ!」


後を追いかけようとする僕にスーツ女が振り返り言った。「君、あのね」


ユウは、やっぱり僕を見ようとしない。


「こいつはね、ユウじゃないのよ。ごめんなさい。ほら、いくわよ」


ごめんなさいって何だよ。分からないよ。

ユウはユウじゃないか。


「ケンケン……」

やっとユウが口を開いた。

「ユウ、これってどういう事?」

「ケンケン、ごめんね」




なんだよ

ごめんじゃ分からないって言ってるだろ。

急にいなくなるなよ。




その言葉達を僕は言えなかった。僕はユウの恋人でも何でもない。

遠くなるユウの背中。




その日ユウと一緒に歩いた道を、帰りは僕一人で歩いた。