まるで夢の中で夢を見ていたかのような裏切り。


その境界線があやふやで、目の前にいる肩を落としたユウとスーツ女さえ、未だ現実味がない。

今、僕の目の前で意気消沈してる女の子は本当にユウなのか?


「うちのアキバが大変迷惑をおかけしました。ほら、アンタもいつまでもそんなカッコしてないで! 今から展示会の打ち合わせがあるんだから」
「あのっ、ユウは……ユウは」

僕は頭が混乱して後の言葉が続かなく、ただユウの名前を呼ぶことしか出来なかった。ユウは下をうつむいたまま、何も言わない。


「アキバ……あんたまたユウちゃんの真似っこしてたのね。ほらまたこんなウィッグなんか付けて!」

スーツ女がユウの髪の毛を掴む。しかしそれは思いっきり地毛で、ユウは顔を歪め、その手を払った。

「アキバ、あんたまさかその髪の毛……」

またアキバって……アキバって何だよ。
誰なんだよ。


「はい染めました。あたしもうスリーズには戻りません」



しかし強気なユウにも怖じ気づに、スーツ女はユウの腕をつかんでエレベーターへ乗ろうとした。