○●雨色ドレス●○

「ありがとうございましたぁー。さてと」

「母ちゃん、これ裏に持っていく?」

ケンチャンマートでは今、パンやデザートに付いてるシールを集めると、皿、マグカップ、その他もろもろがもらえるキャンペーンをやっているらしい。そのプレゼント商品が先程届いたらしく、さっきからこのバカでかい箱が邪魔でしょうがなかった。

「あらいいわよ。母ちゃんやっとくし。それより休憩どうぞ。60分ね」

「えっ、まだあゆ……あっ、飯田さん休憩終わってないよ?」

「若い者同士で仲良くお話でもしてきなさい。久しぶりの再会でしょう?」

母ちゃん二度目の攻撃。

素なのかわざとなのかが分からない。

歩美が休憩に入ったのは18時。現在18時半。30分何を話せと?

ダメだ。

別に今更ぎくしゃくするのもおかしいかもしれないし、向こうだって何も思ってないかもしれないけど、それでも気まずい。

あの顔を見るだけで、三日前の真弓との最後を思い出して泣きそうになる。

休憩室には入れん。

「母ちゃん、ちょっと桜山公園行ってくる」

「あら……もう外暗くなっちゃうわよ?」

「いや、大丈夫だよ。チャリ借りるね」

休憩室で感じる見えない“暗さ”に比べたらね。大丈夫。

僕は母ちゃんから自転車の鍵を借りて、重たい体を桜山公園へ走らせた。