ってな感じでさっさとこの悪夢なゴリラ物語を終わらせてしまいたいんですけど。

だけども、そんなことできるわけもなく、時計は針をチクタクと進めるわけで。

ドサッと荒々しく音をたてて、父ちゃんは休憩室のボロソファーに腰を下ろした。


「健太……こんな言葉を知ってるか?」

「えっ、突然なに?」

父ちゃんは、足元に置いてある黄色い買い物カゴからおにぎりを数個取り出した。三個とも全部昆布だ。

そして虚ろな瞳で僕を見つめ、言葉を続けた。

「腐っても、タイっ……てな。ぐふっ……もうだめヤバス」

それだけを言うと、父ちゃんは休憩室から出て行き、すぐ脇のトイレへ駆け込んだ。


「……結局何が言いたいんだよあのオヤジ」

「父ちゃんったらね、母ちゃんリスペクトのポンポンライオンが気に入ったみたいで。今週毎日食べてるのよ。何故かうちの店ではあまり売れなくてね、廃棄率95%なんだけどぜーんぶ父ちゃんがペロリと食べちゃうんだから。これって、いわば愛よねーウフフ」






……父ちゃん。きっとね

さっきの言葉ってね
「腐っても、タイ」

じゃなく

「腐っても、アイ」

だと僕は思うよ。



結局この日僕は、真相をちゃんと聞かされる事もなく、ナチュラルに仕事の片付けを手伝わされ、ナチュラルに家族三人実家へ帰り(ケンちゃんマートは営業時間が夜中の12時までなんだそうで)、眠りについたのは夜中の二時過ぎだった。