朝、春の爽やかな日差しで

目が覚めた。


「あれは夢だったんだろうか」


四つんばいになって、

ピグが現れたあたりに

行ってみた。


手に何かが当たった。


カランコロン


白いねずみのおもちゃだった。


「ほんとだったんだね」


男は、ねずみを見つめながら

ピグと遊んだ頃のことを

思い出していた。



はっ、として白いねずみを

握り締めた。



ピグがこの音をたてるのは

いつも決まって男が落ち込んで

辛い顔をしているときだった。


『猫の気まぐれ』なんかでは

なかった。



男はやっとわかった。


ピグが遊ぶときは、

私を励ますとき。



「守られていたのは

私のほうだったんだ!」


どんなに小さくても、

どんなにはかなくても、

男にとってその命は

何より重かった。


   【おしまい】